最近ツイッターのテッポー界隈を騒がせているHK416の問題点について。いつもお世話になっている米軍関係者のM氏から面白い情報を得ることができたので、ここで共有したいと思います。
「M氏って誰だよ」という人へ。彼はM4A1 Block 3の試験に参加していた人物で、情報が一般公開される前にいろいろ詳しく教えてくださった方なので、信頼できる情報源だと僕は考えてます。
M氏提供の写真。HK416が銃身の根元付近でポッキリ真っ二つに折れている。
まさかと思って彼に聞いてみた。(M氏の返答は引用形式で示す。強調は筆者による。)
僕「これって分解ですか? それとも事故?」
フルオート射撃中に壊れたものです。
僕「416は頑丈だと思ってました。これって頻繁に起こるんですか?」
はい、とてもよく起こる問題です。
416はみんなが思ってるような魔法のドイツ銃じゃありません。
DI式という穏やかな作動方式を前提とした設計に、強烈なガス圧を生じる作動方式を組み込んでいるためです。
416の反動衝撃は、通常のM16/M4のそれを上回るものです。
このリコイルのせいで、ショートストロークピストン式に基づいて設計されたものではないアルミ製レシーバーに、とても大きな負荷がかかるのです。(とは言ってもかなり強力なアルミ合金ですが。)
僕「なるほど。一部の特殊な人たちは未だに416を使ってますが、なぜでしょうか? 他にも416の問題ってありますか?」
上記の理由で、すでに彼らは416をそれほど使ってません。
最近FN社がSOCOMとの契約を獲得しましたが、主に416の問題が原因です。
HK416は、最初から存在しない問題に対する「解決策」で、価格が高すぎる・専用パーツが多すぎること以外にも様々な問題がありました。普通のDI式AR/M4なら問題ないような数々の場面で416は壊れやすいんです。
DI式M4は簡単に使い続けられます。バッファースプリングを交換し、エキストラクターとそのバネをときどき交換してやれば、それで十分です。予備のボルトを手元に置いといて、必要があればバレルを交換するんです。ミッドレングスのガスシステムを使えばパーツの寿命がさらに延びますよ。
いま使われてる416もそのうち段階的に廃止されるだろうと確信してます。
とのことでした。
要約すると……
ピストン式はDI式よりも強い負荷をレシーバーにかける。AR15系のアルミ製レシーバーはDI式を前提に設計されたものだから、ピストン式の負荷に耐えきれず、HK416はフルオート射撃中にポッキリ折れることがある。米軍はHK416の段階的廃止に向けて動いていて、416の後継はFN社製になるかもしれない。
ガイズリー416の新たな使用例が先日出たばかりですが、今後どうなるのか楽しみです。
疑問点
- この問題はHK416だけでなくピストンAR全般に共通するのか?
- JSOC(CAG/DG)がHK416を使い始めた理由は?
- UKSFがHK416を使わずL119を使い続ける理由は?
備考
- 世界で初めてHK416を一般部隊(特殊部隊ではない)に配備したのはノルウェー軍(HK416N)。
- フランス軍の新小銃選定では、HK416FとFN SCAR-Lが決勝に進出し、最終的にHK416Fが採用された。
- 米海兵隊は、M4カービンに代わる新主力小銃としてM27 IAR(HK416)を採用した。
- 我が国の新小銃選定では、豊和工業の新型国産銃・HK416A5・FN SCAR-LJが候補に挙がっている。
2019/01/26 追記: この記事を月刊アームズマガジン 2019年3月号で取り上げて頂きました。ありがとうございます。