デルタの新小銃?:Geissele Super Duty & Surefire AROC

米陸軍デルタフォースは、HK416の後継となる新小銃を選定しているようである。その候補としてもっとも有力視されているのが、ガイズリーとシュアファイアの共同開発案である。

2019年11月に出願された商標情報に、その写真が見られる。(snakeeater02氏より情報提供していただいた。Many thanks!)

この銃は、正式に発表されていない特殊なものである。筆者が観察して気づいたことを次に挙げる。

  • フルオート仕様のガイズリーSuper Duty 14.5がベースとみられる。
  • が、ロア製造者の刻印はシュアファイアで、右側には両社のロゴがある。
  • 本稿で後述するシュアファイアAROCの刻印がある。(AROCを内蔵しているとみられる)
  • カムピンによる摩耗を防ぐ補強がアッパーに裏打ちされている。(ガイズリーGFRと同様)
  • フォワードアシストが前方に移設されている。(同上)
  • 銃身を接続するアッパー先端部が肉厚になっている。(補強のため?)
  • 型番不明のガイズリーSMR M-LOKが装着されている。

Geissele Super Duty

Super Dutyシリーズは、SHOT 2019で発表された、ガイズリーのコンプリートライフルである。セミオート仕様は「SD-556」、フルオート仕様は「GA-M4」と刻印されている。

発表からまもない2019年2月、GA-M4の用例が初めて露出した。写真を投稿したCombat Diver氏は「米陸軍特殊部隊の銃ではない」と書き残しているので、某政府機関による用例であると推測されている。また、この銃はトリガーに問題があったので大急ぎで回収されたらしい。

2020年11月から2021年3月にかけて、米陸軍グリーンベレーによるGA-M4の用例が投稿された。グリーンベレーがGA-M4を試験していたと考えられるが、詳細は不明である。

米陸軍特殊部隊のURG-Iに採用されたMK16レールを使っているように見えるが、じつはSuper Duty専用のMK16レールである。上面の突起をアッパーの切り欠きと組み合わせることで、レールの回転を防止している。HK416にも同様の工夫が見られる


Surefire AROC

Advanced Rifle Operating Core(AROC)は、シュアファイアがMDM 2017で発表した、DI式AR-15の新しいボルトキャリアである。AROCの主な特徴とその利点を次に挙げる。

  • ボルトラグ(閉鎖突起)が標準より30%長い
    • ARの弱点であるボルトラグの強度を倍増し、破損を防ぐ。
  • ボルトラグに合わせて延長された、専用のバレルエクステンション(銃身受け)を使用する
    • フィードランプ(送弾路)の角度がゆるやかになり、なめらかで確実な送弾ができる。
  • バネで前後に動く重りをボルトキャリアに内蔵する
  • 標準より0.4インチ短いバッファを使用する。
  • 標準より反発力が強いスプリングを使用する。
    • ボルトキャリアが標準より60%長い距離をゆっくり往復するので、連射速度が900 RPMから600 RPMまで低下する。連射が制御しやすくなり、命中精度が向上する。
    • 弾倉からの送弾にかけられる時間が30%長くなり、送弾が間に合わないままボルトが前進してしまう不良を防ぐ。
    • 重りによって勢いよくボルトが閉鎖し、ボルトの跳ね返りも抑えられるので、確実に装填できる。
  • カムピンの通路が拡大されている。
    • 発射後にボルトの開放を遅らせることで、薬室の圧力を15%低下させ、銃の内部につく汚れを減らす。DLCコーティングの助けもあり、清掃・注油なしで数千発を撃つことができる
  • 燃焼ガスを受け入れるガスキーを小型化し、大きなネジ1本で固定している。
    • ボルトキャリアの可動範囲を広げ、作動を低速化する。標準のネジ2本よりしっかり固定できる。

SOFIC 2016で発表されたOptimized Bolt Carrier(OBC)は、AROCの簡易版にあたる製品である。AROCと同様に、専用のバッファとスプリングを使用するが、標準のバレルエクステンションに対応しているので、さまざまなARに差し込んでそのまま使うことができる。

安定性と信頼性を大幅に向上する夢のようなパーツであるが、ユージン・ストーナー氏と元祖AR-15を共同開発した、ジム・サリバン氏による設計であることを考えれば納得がいく。


デルタ新小銃のうわさ

デルタフォースは、ガイズリーSMRを装着した黄金色のHK416を、2012年ごろから使用している。が、2018年に「HK416の調達契約が来年で切れる」といううわさが立ち、HK416の後継が議論されるようになった。GとSFの共同開発銃が登場した2019年11月は、偶然かもしれないが、この時期と一致する。

2020年3月、「デルタがSR-16を使用している」写真が公開され、5月には、米海軍DEVGRUがノベスキーN4を使用している写真が公開された。DEVGRUがHK416の後継としてノベスキーを採用したのはいまや確定的である一方、デルタのSR-16はデブグルN4の見間違いであったというのが現在の定説である。

2021年11月、実銃レポートで名高いShin氏が次のようにツイートした。筆者が知るかぎり、これがGとSFのデルタ新小銃に言及した最初の証言である。

デルタのような特殊任務部隊は公式情報をいっさい出さないので、新小銃については不確かなうわさしかない。が、後学のために、筆者が各地で聞いたうわさを以下にまとめておく。


デルタは有名メーカーによる12品種の小銃を取得し、2021年3月までに、およそ4品種まで絞り込んだ。HKは新型416で立候補したが、G・SF案とSIG MCXが最終候補に残った。新小銃として選定されたのは、10.3・14.5インチのG・SF案である。416やMCXのようなピストン式の銃よりも整備性が高く軽量であることが、選定の理由である。2022年1月の時点で更新はまだ始まっていないが、2022年の夏には新小銃が見られる

416からN4に更新したDEVGRUは、その軽さには満足しているが、実戦配備の直後から砂の問題に悩まされている。ヘリコプターのローターが巻き上げた砂が、銃のボルトにはさまり、作動不良を引き起こしている。そのため、更新が遅れている。ピストン式の416は問題なく作動したので、416を恋しがる隊員もいる。